あらすじ
わたしの名前は、レーナ・フォン・ミュラー。
近衛騎士団「銀獅子団」の賄い番。
味が薄い、見栄えがしない
——わたしの食事は、三年間、ずっとそう言われてきました。
婚約者の副団長から、食堂で百二十人の団員の前で告げられた婚約破棄。
「飯炊きの女を副団長の妻にはできん」
承知いたしました。
わたしは祖母の献立帳と、使い込まれた鉄の寸胴鍋だけ持って、騎士団を去りました。
残してきたのは、団員百二十名の体調管理表が一枚——けれど、その表を読める者は、あの騎士団にはいませんでした。
二ヶ月後、銀獅子団は崩れました。
塩分過多で脱水、訓練で次々と倒れる騎士たち。
今さら「戻れ」と頭を下げに来た元婚約者に、わたしは答えました。
「お断りします。わたしを必要としてくれる場所は、もう見つけましたから」
——食事は嘘をつきません。誰のために作ったか、体が覚えています。