あらすじ
怪異の話をしよう――本物になれない偽物と、偽物みたいな本物の話をしよう。
どちらも正しく本物であり、どちらも正しく本物じゃない。
これは本物以上に本物らしい偽物の物語。
あたしがいうのもなんだけど、この五月市にはあたしみたいな怪異と同じくらい、矛盾に満ちた奇妙な人間がいる。
例えば、無能力なのに自分のことを偽善者だと思い込んで非日常の世界に飛び込んだ少年、優し過ぎたが故に感情を否定するようになった超能力者、周りと見た目が違うせいで居場所を無くした呪術師、友情のために両足を捨てた魔術師に、人の記憶が視れるせいで友達の作れなくなった魔法少女と、枚挙に暇がない。
彼らは現代社会のどこにも居場所がないから……或いはこの能力で自らの心の空白を埋めようとする姿が彷徨っているように見えることから、放浪者(ノーマッド)と呼ばれる。
そんな人間の事情なんて知らずに、世界は今日も怪異や放浪者(ノーマッド)を管理すべきか、排除すべきか、共存すべきかで争い続けている。
世の中にはそういう間違ってないのに正しくないことがたくさんあって、人間からすればあたしはその最たる例に含まれるらしい。
けれどそういうことを悩むことができるのは、どこまでも人間だけの特権だ。
あたしは人間のそういうところが好きだ。
その非合理的な矛盾こそ、人間らしさの証明だと思ってる。
けれども、この物語の主役は怪異じゃない。
これは、偽善と向き合いながら自分の意思を信じようとした怪異が好きな普通の人間の物語。
過去と現在が交錯しながら進む、放浪者(ノーマッド)と怪異を巡る、組織と個人の奇妙な思想戦に纏わる青春群像劇だ。