あらすじ
「ギャルゲ世界に幼馴染2人で転生した~好きバレ絶対できない女vs好感度を見なきゃ脱出できない男~」
主人公とヒロイン。幼馴染で両方顔が整ってる。隣の家。一緒に登校して、一緒に帰って、放課後は主人公の部屋で一緒にだらだらする。それが当たり前の日常だった。
主人公にとって、ヒロインは空気のような存在だ。好きとか嫌いとかじゃなく、いつも隣にいる。それだけ。大切な幼馴染。恋愛感情はなかった。
ヒロインにとって、主人公は——10年間、ずっと好きな人だ。
ある日、二人は10周以上プレイしたギャルゲー「君に恋をしたくて」の世界に転生する。主人公はそのまま主人公に。ヒロインはゲームの主人公の推しヒロイン・深辺雪に。
脱出条件はシンプル。ゲームのエンディングにたどり着くこと。
主人公は余裕だった。10周やったゲームだ。イベントの発生条件も選択肢の正解も全部頭に入っている。ヒロインと協力すれば、すぐに帰れる。
——はずだった。
しかし、このゲームには、ヒロインのルートに入った瞬間、
——主人公の画面にヒロインの好感度が数値で表示される。
凛の好感度は、9999999999999999999999999.....
UIの端まで9が並んでいる。表示枠を突き破って、画面の端まで到達している。
主人公は当然、好感度は0から始まると思っている。10周やってきたゲームでは、いつもそうだったから。
0じゃない。
ヒロインは知っている。ルートに入った瞬間、この数字が主人公の目の前に表示されることを。10年分の恋心が、全部、数字になって、主人公に晒されることを。
——絶対に、バレてはいけない。
さらに厄介なことに、他の4人のヒロインも全員転生者だった。全員が主人公を探している。全員が主人公を狙ってくる。
主人公を勝ち取る。でも、好きだとバレてはいけない。
この二つを同時にやらなきゃいけない。
それでも二人のギャルゲの中の日常は続く。寮の部屋でゲームをして、お菓子を食べて、ダラダラ喋って、笑い合って。ヒロインがほっぺにチューすると主人公は耳まで真っ赤になる。ヒロインの転生前の身体では何も感じなかったくせに、主人公の推しの雪の身体だと男の子の反応をする。
嬉しかった。10年間で初めて、主人公がドキドキしてくれた。
たとえそれが、雪ちゃんの見た目のおかげだとしても。
嘘でも。錯覚でも。両想いの景色に一番近い場所に、今いる。
そして、ヒロインは気づいてしまった。自分だけが脱出のあまりにも重大なヒントを持っていることに。