あらすじ
婚約破棄された瞬間、世界が変わった——。
公爵令嬢イザベラは、長年にわたって"悪役"の立場に置かれてきた。
侍女を使った嫌がらせ、招待状の握り潰し、弱者への冷酷な仕打ち。
そんな濡れ衣を次々と着せられ、宮廷での評判はどん底。
婚約者であるセドリック王太子でさえ、彼女を信じようとしなかった。
すべての原因は、ヒロイン・ルミナという少女の存在だった。
だがイザベラだけは、ずっと気づいていた。
この世界が——おかしい、と。
証拠が消える。
あり得ない偶然が重なる。
どれだけ真実を語っても、なぜか自分だけが悪者になっていく。
それは"物語補正"と呼ぶべき力だった。
ヒロインを中心に世界を都合よく動かし、人の判断を歪め、真実を塗り替える——目に見えない、でも確かに存在した、歪みの力。
そして舞踏会の夜、王太子は宣言する。
「婚約を、破棄する」
その瞬間——補正が、消えた。
空気が変わる。
人々の目が覚める。
王太子は自分の判断を疑い始め、周囲は証拠のなさに首を傾げ、ルミナは初めて"補正のない世界"に立ちすくむ。
悪役はイザベラではなかった。
世界を歪めていたのは、守られていたはずのヒロインの側だった。
王太子は縋る。「やり直したい」と。
イザベラは静かに、そして明確に、拒絶する。
「あなたは"物語に選ばれた私"しか見ていなかった。——私はもう、誰かの都合のいい役は演じません」
三年間の理不尽が、ようやく正しい形に収まっていく。
これは、ずっと歪んでいた世界が、本来の姿を取り戻す物語。
そして一人の令嬢が、他の誰でもない——自分自身の人生を歩き始める物語。