あらすじ

工場で働いて、六年が過ぎた。 柴崎直人、二十四歳。タトヨブレーキシステムズ、製造部検査グループのリーダー。高校を出てそのまま入社し、作業を覚え、油と鉄の匂いを体に染み込ませながら、一日一日を積み上げてきた。 最初の一年は覚えることで精いっぱいだった。二、三年目に「わかってきた」と思えた。六年目のいまは、ラインの流れを見れば何が起きているか体でわかる。それだけのことだ。リーダーという肩書きはついたが、特別なものではない。ラインを管理して、品質を確認して、後輩に教えて、帰る——その繰り返しが、いつの間にか直人の日常になっていた。 止まっていた、とは思っていなかった。 ただ、何かが欠けているような気がすることは、あった。 そこへ現れたのは、高坂真昼。 高校時代、成績でいつも一位の直人に食らいつき離れなかった、永遠の二位。俺に毎回テストで勝負を挑んできては負けて、悔しがっていた。長い黒髪も、整った顔立ちも、負けず嫌いなところも変わっていない。 変わったのは——作業着を着ていることだ。 大手メーカーの大卒総合職として三週間の工場実習にやってきた真昼は、優秀すぎるがゆえに現場で浮いていた。効率の悪い作業手順に疑問を呈し、的を射た質問を連発し、気づけば孤立していく。そんな彼女を、直人はいつの間にか気にかけるようになっていく。 でも直人のそばには、もう一人いる。 入社から三年、ずっと隣にいた後輩・小宮陽菜。明るくて、現場に溶け込んでいて、誰よりも直人のことを見てきた子。彼女もまた、静かに気持ちを積み重ねてきた。 止まっていた時間が、工場のラインに乗って動き出す。 朴訥なリーダー、不器用な元ライバル、一途な後輩——工場で紡ぐ青春仕事小説。

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カクヨム
カクヨム2026/05/11
  • 現在の作品アオハルファクトリー ―高卒作業者と大卒エリート、ふたりの不器用な再会―