あらすじ
とある夜。自宅へ帰り着いた彼は、玄関のドアを閉めた途端、長く深い感嘆の息を吐いた。頬が自然と緩み、顔に蕩けるような笑みが浮かんでいる。胸の奥からじんわりと温かいものが滲み出し、それがゆっくりと全身に広がっていくのを感じていた。
だが――次の瞬間、その幸福感はふっと消え失せた。
違和感を覚えたのだ。何かがいつもと違う。まるで妻がささやかな模様替えをしたときのような、あるいはどこかで買ってきた見慣れない置物が一つ増えていたときのような、そんな小さな異物感。
彼は靴を脱ぎ、音を立てぬよう慎重に廊下を進み始めた。リビングへ近づくにつれ、その曖昧な不安は輪郭を帯び、やがてはっきりとした確信へと変わっていった。そして――。