あらすじ
伯爵令嬢リゼット・ベルジュには、人の言葉の“重さ”が見える。
誠実な約束は温かい光に。
破られた誓いは、冷たい宝石に。
そして嘘は、黒く透き通った高価な|言質石《ことばいし》になる。
王太子レオンハルトの婚約者として十年間尽くしてきたリゼットは、建国祭の夜、二百人の貴族の前で婚約破棄を告げられる。
「君のように、人の言葉を値踏みする女を王妃にはできない」
隣で微笑むのは、癒やしの奇跡を持つ聖女ミリア。
リゼットは嫉妬深い悪女として断罪され、王宮から追い出されるはずだった。
けれど、王太子が投げ捨てた十年分の約束は、その瞬間すべて“商品”になった。
「承知しました。では、殿下がくださった嘘は、わたくしが処分してもよろしいですね」
リゼットが向かったのは、王都裏通りにある小さな質屋《夜鳴き鳥》。そこでは、失くした約束、言えなかった謝罪、忘れられた最後の言葉まで売買されていた。
捨てられた令嬢は、王太子の嘘を元手に、言葉を扱う質屋として生き直す。
一方、言葉の信用を失った王宮では、聖女の奇跡も、王太子の宣言も、少しずつ崩れ始める。