あらすじ

川口市の工場地帯。  そこで作られているのは、誰もが一度は手にしたことがある、けれど名前すら意識されない「食パンの袋の留め具」――バッグ・クロージャーだ。 「評価されたいなら、向いてない仕事だな」  就活に敗れ、流されるまま入社した田端光一は、職人気質の鮫島や金型職人の熊谷ら、寡黙な男たちの背中に戸惑う。彼らが守るのは、0.1ミリの切れ込みが生む「音」と「感触」。数値化できない職人の勘だけが、パン工場の巨大なラインを支えていた。  しかし、効率化の波と海外製への切り替えという現実が、小さな工場を飲み込もうとする。 「俺たちが仕事してる証拠は、誰かが気づかないことだから」  その言葉の真意に触れたとき、田端の中で「安っぽい音」だったはずのパキッという響きが、かけがえのない誇りへと変わっていく。  これは、何者かになりたいと願った若者が、名もなき必需品の中に「確かな手応え」を見つけるまでの、静かで熱い物語。

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カクヨム
カクヨム2026/05/10
  • 現在の作品【工場職人お仕事短編小説】留め具の誇り ~誰にも気づかれない、世界で一番小さな仕事~