あらすじ

両親を亡くしたあと、高校へは行かずに、海の街の観光ホテルで働き始めた悠真。 ある日、ロビーに現れた一人の女性客から、目が離せなかった。 一目惚れではない。胸が高鳴っているのではなく、奥の方が静かにざわついていた。 見惚れているのではなく、何かを探していた。 客室で浴衣の説明をしている時、彼女の左手首に、小さなホクロを見つける。 少し歪なハート型のホクロ。 それは、悠真が子供の頃、名前を知らないまま終わった夏に、隣に座っていた少女の手だった。 あの夏、悠真は彼女に名前を訊いた。 けれど、彼女が答えようとした瞬間、怖くなって、自分の名前だけを叫んで、走って逃げた。 訊けたのに、聞けなかった。 何年も経って、ホテルの廊下で、彼女は静かに名前を差し出してくれる。 そして、悠真は知る。あの夏、彼女もまた、何かを抱えてあの草むらにいたことを。 置き去りにした夏と、動き出す朝の、静かな再会の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/05/10
  • 現在の作品名前を知らない夏