あらすじ
両親も兄妹も失い、しがらみを捨てたくなった日本人女性は、二十代で当てた宝くじでサハラ砂漠の土地を買う。十年かけて緑地化し、さらに三年かけて住居を整えると、いつの間にかそこは畑も学校も医務室もある小さな町になっていた。本人はあいかわらず自室の窓下で枯山水を作りながら、町長の仕事を秘書に丸投げして、のんびり暮らしている。
ある砂嵐の日、砂漠の部族の王子と従者の二人が壁に迷い込んでくる。緑と水と人の温もりに満ちたこの場所は何なのか。主のあの女性は、一体何者なのか。砂漠のどこかに必ず隠れているという「井戸」のように、名もないこの町は今日も静かに人を迎え入れる。