あらすじ

「君は冷たい。 愛がない。 魅力がない」 王城の舞踏会の夜、王太子レオニス殿下は大勢の貴族が見守る中で、婚約者であるセシリア・ヴァルトハイムに婚約破棄を告げた。 五年間。 セシリアはただその一心で努力を重ねてきた。 作法、語学、政務、外交——殿下の隣に立てる人間であろうと、ひとつずつ積み上げてきた。 それでも届かなかった。 やっぱり私は、嫌われていたのだ——そう思って頭を下げようとした、その瞬間。 視界に、数字が浮かんだ。 【レオニス=-80】 驚いて周囲を見渡すと、どこを向いても数字が見える。 侍女、料理長、貴族、騎士——その全員の顔のそばに、本心だけを映す数値が浮かんでいた。 +72、+80、+63、+58……。 マイナスの数字は、どこにもない。 どこにも——ただ一人を除いて。 「嫌っていたのは……王太子殿下、だけ?」 五年間、セシリアはずっと間違えていた。 周囲の全員に嫌われていると思っていた。 感情を出せない自分、笑顔が少ない自分、言葉が足りない自分——そういう自分は疎まれていると、疑いもしなかった。 でも数字は嘘をつかない。 使用人は+80で彼女を慕い、貴族は+60で彼女を信頼し、王宮のあらゆる場所が「彼女がいたから回っていた」と語っていた。 そしてやがて明らかになる、殿下の-80の正体。 それは愛の欠如でも魅力の不足でもなく——「自分の思い通りにならない存在」への、ただの個人的な感情だった。 数日後、殿下は「誤解だった、戻ってこい」と言いに来る。 しかし数字は正直だ。 本心は、まだ-60のまま——。 「殿下が見ていたのは、私ではありません。 私は最初から、あなた以外には評価されていました」 婚約破棄をきっかけに覚醒した「本心可視化」の能力が、五年分の誤解を一枚ずつ剥がしていく。 他者の本心が見えるようになった先に、セシリアがたどり着いたのは——「自分がどれほど自分を見ていなかったか」という、静かな真実だった。 嫌われていたのは、一人だけ。 評価されていたのは、最初から。 気づいていなかっただけで、私はずっと——そこにいた。

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小説を読もう2026/05/10
  • 現在の作品婚約破棄された瞬間、全員の“好感度”が見えるようになりました——ただし嫌っていたのは王太子殿下だけだったようです