あらすじ
ルーメンヘルツは、永遠の夜に閉ざされた国だった。
空に浮かぶ白い月《聖骸月》は七つの表情を持ち、その“月相”によって世界そのものの性質が変質する――人々はそれを《月相律》と呼び、恐れながらも受け入れて生きていた。
七大貴族の一つ、アルヴェイン家の嫡子リシェルは、鏡に自らの姿が映らない異質な存在だった。
認識によって姿を変える“鏡の血”を継ぐ一族において、それはあり得ない異常であり、同時に誰にも理解されない孤独でもあった。
ある夜、聖骸月は“微笑んだまま”動かなくなる。
それを境に、黒鏡宮では歴代当主の肖像画が一斉に語り始め、鏡からは正体不明の存在《離画》が這い出す。
そして肖像たちは告げる――「見つけた」と。
異変は瞬く間に城全体へと広がり、鏡そのものが現実を書き換え始める中、リシェルは“月に選ばれた異物”として命を狙われることになる。
混乱の中で出会った少女セレーネ・フィオレンと共に、リシェルは崩壊する黒鏡宮からの脱出を余儀なくされる。
だがそれは、まだ始まりに過ぎなかった。
月はなぜ微笑んだまま止まったのか。
鏡に映らない少年とは何者なのか。
そして、八百年前に断絶したとされる“白暁”とは何だったのか。
永遠の夜の国で、歪んだ記録と失われた真実を巡る物語が動き出す。