あらすじ

帝国の南外縁には、征服でも解放でもなく、「返還」と呼ばれる事業の中で名を変えられた街区がある。 帝国修復局に勤める修復師リゼット・オルヴァの仕事は、そこから運び込まれる品々を、規定どおりに直すことだった。 青く灯っていた街灯。左肩に合うよう歪んだ義手。三息目で音が割れる葬送笛。名前をほどかれた布。読めなくなった扉。嘘をついた秤。九分だけ遅れる時計。 帝国の規格では、それらは不良であり、破損であり、修正すべきものだった。 けれど、壊れているものと、壊してよいものは違う。 監査官ユリウス・クラウゼン・ロートフェルトに見守られ、ときに問い詰められながら、リゼットは品物の奥に残された人々の暮らしを読み取っていく。 これは、まだ地図にならない町と、そこに残る名もない痛みを、修復しようとした十の記録。

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小説を読もう2026/05/10
  • 現在の作品帝国修復師リゼットの返還記録 ――まだ地図にならない町