あらすじ
滅びの果ての異界オラゾ。外環区の小さな保育施設で働く補助個体ミナは、水棲生物の幼体たちと、発光微生物アトラウェネスの灯りに囲まれて、静かな日々を送っていた。
名前を持たない幼体たちにこっそりあだ名をつけ、毎朝に「おはよう」と声をかける。
その灯り――ピカは、まるで返事をするように光り、ミナの歌や仕草を少しずつ覚えていく。
しかしある朝、ピカはミナ自身も覚えていないはずの記憶を光でなぞり始める。それは、ただの微生物にはあり得ない“記憶同調”の兆候だった。
誰にも記録されない日々を覚えてくれた小さな灯り。
けれど、覚えることは救うことと同じなのか。
滅びの果てに作られた楽園で、優しい朝の挨拶が、静かな終末を告げる。