あらすじ

二十七年間、中村灯は「言葉のフィルター」を使いこなして生きてきた。  相手を傷つけないよう、場を壊さないよう、本音を丁寧に加工して出力する。  それが日本社会で生きるための、彼女の唯一の武器だった。  そんな彼女の前に現れたのは、イタリアから赴任してきたエンジニア、マルコ・フェラーリ。  彼は日本の「察する文化」に戸惑い、灯が断りの意味で放った「検討します」を、言葉通り前向きな約束だと信じてしまう。  見かねた灯は、彼のために「翻訳リスト」を作成する。 「大丈夫です」は、不快か疲労。 「難しいですね」は、実質無理。  リストを通じて交流を深める二人。  しかし、マルコは灯自身も気づかなかった「言葉の癖」を観察し、彼女のフィルターの内側にある孤独を暴いていく。 「言葉は言葉じゃないんですか?」  真っ直ぐな問いに、灯の鉄壁のフィルターが揺らぎ始める。  これは、言葉を捨てて本音で向き合う勇気を見つけるまでの、静かで熱い愛の翻訳の物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/05/10
  • 現在の作品【異文化交流お仕事短編小説】恋する翻訳辞書(ディクショナリー) ~フィルター越しの君に、字義通りの愛を~