あらすじ
大戦終結から七年――。
白い断崖に築かれた港町ルチェリアでは、今もなお多くの“帰れない者たち”が彷徨っていた。
崖の上に建つ小さな宿《海灯亭》は、そんな旅人たちを静かに迎え入れる場所。
宿を切り盛りする娘レティは、誰に対しても「おかえりなさい」と笑う、不思議な女性だった。
ある嵐の夜、《海灯亭》へ戻ってきたのは、無愛想な傭兵ガイゼル。
大戦を生き延びた彼は、数え切れない傷跡と、誰にも知られることのない痛みを抱えていた。
灯の消えない宿には、温かな食事と何気ない会話がある。
ガイゼルには、人を愛する資格などないはずだった。あの大戦で、多くのものを壊しすぎたから――。
これは、戦争の傷跡を抱えた男と、帰る場所を守り続ける娘の、静かな再生の物語。
止まっていた時間は、少しずつ動き始める。