あらすじ
「恥ずかしいから、三年間、外に出るな」
結婚式の翌朝、夫は朝食のパンをちぎりながら、私を見ずにそう言った。
子爵家の田舎娘である私は、夫にとって見栄えの悪い妻だったらしい。
「かしこまりました」
私はアリシア・ロード。北の小領主の娘で、二十四歳の新妻。
持参金だけが目当ての結婚で、夫が望んだのは妻ではなく財布だった。
──ならば、外に出ないでも、できることは山ほどある。
三年間、私は屋敷の中で帳簿を読み、領地を立て直し、北部の薬草を王都に送り続けた。
やがて王宮財務局から、一通の書状が届く。
差出人の名は、エドワード・レグナート。この国の、王太子殿下。
「あなたは、恥ずかしい女性ではない。あなたを隠した男の目が、恥ずかしいのです」
そして三年後、王宮春待ち夜会。
夫は「そろそろ社交界に出してやる」と寛大ぶった手紙を寄越した。
──ええ、出ますとも。あなたの隣ではなく、王太子殿下の隣に。
これは、三年間いないものとして扱われた女が、誰かに数えられる側へ回るまでのお話です。
※一話完結・婚姻無効・元サヤなし・ハッピーエンド