あらすじ
「クラウス様は、わたくしがいないと生きていけませんの。だから、アイリス様。婚約を、譲ってくださいませ」
婚約者と顔を合わせて十五分後、銀髪の聖女はそう言って涙を流した。
ここはヘリオス王国。「強き者は弱き者に譲る」を国是とする美しい国。
隣国カルディアから嫁いできた伯爵令嬢アイリスは、紅茶のカップを置いて、静かに答えた。
「お断りいたします」
──私の国には、そのような美徳はございません。
婚約者を譲り渡せと迫る聖女。「君は強い人だろう」と困った顔で言う王太子。
「皆が幸せになる」と諭す国王。
だが、アイリスは知っていた。
クラウス殿下の元婚約者は、自分が五人目だということを。
そして、譲り続けた四人の令嬢が、今どうなっているのかを。
「譲り渡せと言われた婚約者に、未練は残りませんもの」
ヘリオス王国に譲られない令嬢が、初めて現れた日の話。
※他作品との関連はありません。一話完結の短編です。
※ハッピーエンド。元サヤなし。