あらすじ
舞台は、巨大な階層構造を持つ異世界「大傾斜大陸」。七柱の梯子神を崇めるこの地では、百年に一度、竜神ウロボロのもとへ生贄の乙女を送り出す《昇華の儀》が執り行われてきた。
主人公レンは、前世の記憶を持つ転生者。十五歳になった今は、小貴族の三男として静かな日々を送っている。魔力は低いが、「魔素の流れ」を視覚的に捉える異能を持つ彼は、その目のせいで周囲から奇人扱いされながらも、古文書館に籠もって神話や歴史を探究する日々を重ねていた。
ある夜、領都の祠で出会ったのは、銀の髪と深い青の瞳を持つ少女。彼女こそ、今回の《昇華の儀》の生贄に選ばれた公爵令嬢セラフィーナだった。レンの眼は、彼女の周囲で魔素が巨大な渦を描く異常を捉える。そして禁断の地下聖堂で原本の石版を調査した彼は、現行の教義にはない「ある記述」を発見する。
洞窟にいるのは、本当に竜なのか――。
儀式の真実を確かめるため、レンとセラフィーナは聖堂騎士団の追跡を逃れ、神梯嶺の危険な山道を踏破してゆく。屍衣苔の巨人、記憶を喰らう忘れ鴉、そして無数の食樹が待ち受ける霊峰の奥で、二人を待つものとは。
はたして、千年のあいだ誰も知らなかった真実とは何か。そして「星霜の繭」という古い子守唄に秘められた意味とは。