あらすじ
小学生の千秋は、複雑な家庭環境に孤独を感じていた。実の母は去り、父は浮気性。優しい継母や「天使」と慕われる優秀な弟・優斗と自分を比べ、夜な夜な一人で映画を見ては涙を流す日々を送っている。学校ではおちゃらけて見せるが、心にはいつも冷たい雪が降り積もっていた。そんな彼を厳しく叱咤するのは、弟に気がある素振りを見せるクラスメイトの野菊だった。
ある雪の日、千秋はクラスで大人しい存在の泉さくらと公園で出会う。思いがけず始まった雪合戦を通じて、さくらの温かな笑顔に触れた千秋は、初めて心に春の予感を感じる。さくらは千秋の悲しみを見抜き、丸ごと肯定してくれた。二人は付き合い始め、千秋は映画の世界ではなく、現実の温もりに救いを見出していく。
順調に思えた日々の中、千秋は衝撃の事実を知る。野菊が優斗に近づいていたのは、実は千秋を近くで見るための口実であり、彼女がずっと前から自分を想っていたということ。野菊は、さくらとの幸せを願うと言い残し、桜の舞い散る中で千秋の前から去っていく。千秋は、誰かを傷つけてしまう現実の痛みを知り、同時に他人の心の深さに触れる。
人は結局一人かもしれない。それでも千秋は、自分を信じて手を差し伸べてくれるさくらの手を握り返す。心に残る「雪」のような孤独や過去を抱えながらも、目の前の「さくら」がくれる現実の温もりを信じて歩み出すことを決意し、物語は完結する。