あらすじ
総合病院で働く理学療法士、神谷湊(24)。
二年目を迎えた彼は、高齢患者のリハビリに追われる毎日を送っていた。
患者から感謝され、職場での評価も悪くない。
だが、変化のない日常と孤独な私生活の中で、彼は次第に“触れること”そのものへ異常な執着を抱き始める。
夜な夜な視聴するマッサージ系動画。
女性が施術によって力を抜き、無防備になっていく姿に、神谷は強く惹かれていく。
「自分なら、もっと深く相手を緩ませられる――」
そんな危うい自信を抱いた彼は、独学でオイルマッサージやリンパトリートメントを学び始める。
そしてある日、出会い系アプリに匿名で投稿する。
「理学療法士しています。
肩こりや疲れで悩んでいる方、
無料でマッサージさせてください」
最初は純粋な施術だった。
仕事では見せない柔らかな声。
オイルの匂い。
静かな個室。
女性たちが少しずつ警戒を解いていく空気。
その時間は、神谷にとって日常では得られない高揚だった。
しかし、施術を重ねるほど、彼の中で“治療”と“欲望”の境界線は曖昧になっていく。
相手を癒したいのか。
支配したいのか。
触れることで満たされたいのか。
自分でも答えが分からないまま、神谷は徐々に深みへ沈んでいく――。
これは、
“人を癒す手”を持った男が、
その指先に潜む欲望へ飲み込まれていく物語。