あらすじ

四月になると、公園に人が増える。正確には、カメラを持った人間が増える。 桜前線が北上するニュースの翌日、インフルエンサーたちがやってくる。構図を決めて、撮って、去る。その動画は五万回再生され、コメント欄には「綺麗」と並ぶ。三十年この公園を管理してきた男には、その「綺麗」が、どこか遠い言葉に聞こえた。 公園の奥の斜面に、樹齢百年の山桜がある。写真映えはしない。誰も足を止めない。 今年の三月、管理人は入り口に柵を立てた。看板には「整備中」と書いた。 染井吉野が散り、桜前線のニュースが止み、インフルエンサーたちが次の話題へ去った五月——山桜は、誰も知らないまま満開になった。 見た、ということで十分だと思った。

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小説を読もう2026/05/09
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