あらすじ
『「お姉様は数字に強いだけ」と追放されましたが、妹が国庫を三日で空にしました』
静かな帳簿を抱え
夜更けまで数字を並べていた姉を、
誰も褒めはしなかった。
「可愛げがない」
「数字に強いだけ」
そんな言葉だけが、
冷たい王宮に響いていた。
けれど――
国を支えていたのは、
剣でもなく、
宝石でもなく、
彼女の細い指先が綴った
一冊の帳簿だった。
金貨は無限ではない。
豊かさには裏付けがいる。
明日の平穏は、
今日の慎重さでできている。
その当たり前を、
誰も理解しなかった。
姉が去った三日後。
笑顔で配られた金は消え、
華やかな祝宴は終わり、
王国には請求書だけが残った。
妹は泣き叫ぶ。
「まだ数字はあるのに!」
けれど姉は知っている。
それは希望ではなく、
積み上がった負債の数字。
見たくなかった現実。
愛嬌では埋められない赤字。
だから彼女は静かに頁を閉じる。
――数字は、嘘をつかない。
追放されたその日から、
本当に空になっていたのは、
国庫ではなく、
“知恵を敬う心”だったのだ。