あらすじ
高校一年生の成瀬歩は、どこにでもいる平凡な少年だった。
成績は中の下。部活は将棋部だが、特別強いわけでもない。家族と普通に暮らし、友人と弁当を食べ、放課後は将棋盤に向かう。自分の人生に、大きな事件など起きるはずがないと思っていた。
だが、ある事故をきっかけに、歩の中で別の人格が目を覚ます。
その人格は、歩とは記憶を共有していなかった。
自分が誰なのかも分からないまま病室で目覚め、患者タグ、スマートフォン、学生証、鏡に映る顔から、自分が「成瀬歩」という高校生の体にいることを冷静に推理していく。
そして夜。
歩が眠っている間に、もう一人の彼は動き始める。
知識を集め、金を稼ぎ、身分を求め、やがて裏社会と企業の世界へ足を踏み入れていく。
目的はまだ誰にも分からない。
ただ一つ確かなのは、彼が歩の日常の裏側で、少しずつ現実を変え始めているということだった。
朝、歩は気怠さと小さな違和感だけを覚えて目を覚ます。
妹の何気ない一言。部屋の物の位置。学校で聞く妙な噂。
それらが、自分の知らない自分につながっているとも知らずに。
昼は平凡な高校生。
夜は、別人として成り上がる天才。
これは、何者にもなれないと思っていた少年と、消えたくないと願ったもう一人の少年が、同じ体の中から世界を変えていく物語。