あらすじ
桶狭間、金ヶ崎、長篠、手取川、山崎、北ノ庄、大坂、原城。
歴史に名を刻んだ戦の陰には、勝敗の一語では語りきれない人間の声がある。
敵将の首ではなく、勝利へ至る道を探った男。
主君を逃がすため、落日の退き口に残った男。
籠城の闇から、命を賭けて声を届けた足軽。
北陸の雨と敗報に、天下の限界を知った信長。
大義が謀反へ変わる瞬間を見た光秀。
娘たちを未来へ逃がし、燃える城に残ったお市。
豊臣の名を勝者に渡さぬため、紅蓮の大坂に沈んだ淀殿。
奇跡を起こせぬまま、祈りを背負わされた天草四郎。
本書『戦国血風録』は、合戦の華やかな勝利ではなく、その裏で人が何を恐れ、何を守り、何を失ったのかを描く歴史短編集である。
戦とは、刃だけで決まるものではない。
情報、退却、叫び、敗報、沈黙、母の決断、祈り。
そのすべてが、時代を動かした。
戦国の血風は、勝者の旗の下だけで吹いたのではない。
敗れた者、残された者、名を語られなかった者たちの胸の中にも、確かに吹いていた。