あらすじ
平民上がりの少女、エルセリナ・ヴェルクレアは、失踪した公女に似ているという理由で公爵家に引き取られた。
与えられたのは、公女の名と、誰かの代わりとして生きる役目。
けれど家族も使用人も学園も、彼女を本当の公女とは認めなかった。
「偽物のくせに」
「本物の席を奪った女」
「痛みを知らなければ、身の程も覚えないのね」
叱責、懲罰、食事抜き、冷たい床の懲罰室。
学園では教師に手を打たれ、使用人には命じてもいない失敗の罰を押しつけられる。
それでもエルセリナは、公爵家の帳簿、社交記録、領地報告、家族の失態処理を黙って背負い続けていた。
痛みで取り乱す夜もある。怖くて泣く日もある。
けれど彼女は、泣き寝入りでは終わらない。
その日、誰が何を言い、誰が嘘をつき、何を押しつけたのか。すべて記録に残していた。
そんな彼女を初めて“偽物”と呼ばなかったのは、冷酷で怪物と恐れられる皇太子、アシュレイド・ヴァルデオス。
「名を言え。お前自身の口で」
誰も聞かなかった彼女の言葉を、皇太子だけが聞いた。
誰も信じなかった彼女の記録を、皇太子だけが信じた。
やがて、失踪していた本物の公女が帰ってくる。
公爵家は歓喜し、社交界は美談に酔い、エルセリナは完全に居場所を失っていく。
しかし、本物の帰還をきっかけに、公爵家と王宮に隠されていた嘘が少しずつ崩れ始める。
これは、偽物と呼ばれた少女が、冷酷皇太子と共に真実を暴き、自分の名前と愛される場所を取り戻す物語。