あらすじ
「エリエス、今日で終わりだ。店にもボクの家にも……もう来なくていい」
「え……えっと? ガスノトノン、どういうこと? 明日は国王陛下主催の晩餐会よ? 仕込みだってまだ……え?」
「仕込み? はっ、笑わせるな。君がちまちまと野菜のクズを煮込んだり、肉を一日中叩いたりしている貧乏くさい作業のことだろ?はは!」
「これからはケリヌがボクのパートナーだ。君のような地味で華もない女は、ボクの芸術的な料理には相応しくない」
「でも、ガスノトノン! 奇跡のコンソメも至高のデミグラスも、私が調合していたのよ! 貴方はその仕上げをしていただけじゃないっ!?」
前世洋食屋の娘として育ち、徹底的に叩き込まれた出汁と下処理の技術。転生して得たスキル味覚と食材鑑定。
料理が評価されていたのは、裏で何時間もかけて作ったベースの出汁があったから。
彼は鍋に入れて温め、皿に盛っていただけなのによくも言えたものだ。
「おい黙れ! あれは!ボ、ク、の、レシピだ! 君はただの助手だろ! ……ああ、そうそう。君が書き溜めていたレシピノートは没収させてもらうよ。店の財産だからね」
「なっ……あれは私の……私の!」
「ちっ!さっさと消えろ! 二度とボクの前に顔を見せるな!」
裏口の重い扉がバン! と閉ざされた雨が降りしきる路地裏。放り出された荷物を抱きしめながら、呆然とした。何が起こったのかうまく組み立てられなくて。
許さない。技術を盗みんで捨てたことを後悔させる。