あらすじ

平成四年、六月。バブル崩壊の傷跡がまだ生々しい東京で、失踪人専門の探偵・桐島悟のもとに一人の女が訪ねてくる。借金を抱えたまま消えた夫を探してほしい。と、いう依頼であった。 死んでいてもいい。ただ、どこにいるのか知りたい。 そう言った女の目に、桐島は奇妙なものを感じた。悲しみとは少し違う何かを。 調査を進めるうちに似たパターンの失踪が次々と浮かび上がる。借金を抱えた中年男たちが、ある日突然、跡形もなく消えていく。だが不思議なことに、彼らは死んでいない。どこかで、生きている。 手がかりを辿った先に、葛飾の古びた雑居ビルで一人の男と出会う。男は静かに、しかし確信を持って言った。「向井さんは、もう、戻らない人です」と。 桐島は追う。だが追えば追うほど、霧は深くなる。同業の探偵は「降りろ」と警告し、元妻の麻子は何かを知っていながら口を閉ざし、夜中に無言電話が続く。そして、見知らぬ女の声が受話器の向こうから囁く。「思い出さないで、ください」と。 思い出す、とは何を? 桐島には平成元年の記憶にぽっかりと空白がある。長年、気にしてこなかった空白。だがこの事件に触れるたびにその空白がじわり、じわり。と、 同時に自分が何者であるかを知らない一人の男の物語。

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小説を読もう2026/05/09
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