あらすじ
聖務解剖官ノア・フェルディナンドは、死体しか信用しない男だった。
生きている人間は嘘をつく。
愛されたいから、生き延びたいから、平気で自分を偽る。
だが死体は違う。
静かで、平等で、言い訳をしない。
そんなノアが仕えるのは、“奇跡”を司る大聖堂。
だが彼は、民衆に愛される聖女アナスタシアの治癒の奇跡を見て、こう言い放ってしまう。
――内臓の位置が気になりますね。
その不敬を咎められ、辺境修道院への左遷を命じられるノア。
去り際、彼は聖女に告げる。
「あなた、三日以内に死にますよ」
そしてその夜。
本当に聖女は、大聖堂の晩餐の最中に急死した。
当然のように疑いを向けられるノア。
だが彼は死体を一目見るなり、静かに断言する。
「これは毒殺ではありません」
暴かれていくのは、奇跡の正体。
聖女が背負っていた、あまりにも優しく、あまりにも醜い真実。
それは神の祝福ではなく、
皆が目を逸らし続けた“信仰の代償”だった。
追放された解剖官が解き明かすのは、
呪いでも陰謀でもない。
人が「特別でありたい」と願う、その祈りの末路。