あらすじ

「冷酷」「民を苦しめる悪女」——それが、ヴィクトリア・エレナ・フォン・クロイツベルク公爵令嬢への評価だった。 貴族の資産を容赦なく没収し、孤児院への補助金を打ち切り、不正には一切の情状酌量なし。貴族にも平民にも等しく嫌われる"冷酷令嬢"は、ある日、王太子アルフレッドから公開の場で婚約を破棄される。 「あなたは冷酷だ。民を苦しめている。王妃に相応しくない」 ヴィクトリアの答えは、たった一言だった。 「ええ、すべて事実ですわ」 完全なる悪役として断罪されたヴィクトリアは、しかし何も弁明せず、あっさりと身を引く。代わりに就任した"善意の"財政顧問、復活する補助金、減税、寛容政策——民衆はアルフレッドを熱狂的に支持した。これが真の王道政治だと、誰もが信じた。 だが現実は、理想の重さに耐えられなかった。 財政は静かに悪化し、罰せられないと知った不正は増殖し、善意で作られた制度は腐敗の温床となっていく。ヴィクトリアはそのすべてを、遠くから、数字の中に見ていた。最初から、分かっていたように。 「私が切り捨ててきたものは、"不要なもの"ではありませんでした——今守れば、国が死ぬものだっただけです」 これは「ざまぁ」の物語ではない。悪役令嬢が見返しを求めて動く話でもない。ただ一人の女性が、嫌われることを厭わず、誰にも理解されないまま、国家という巨大な現実と向き合い続けた——その証明の記録である。 婚約破棄も、断罪も、追放も、すべて織り込み済み。彼女が本当に恐れていたのは、誤解されることではなく、国が死ぬことだったから。

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小説を読もう2026/05/08
  • 現在の作品婚約破棄されました——ええ、冷酷で結構。ですので“私が切り捨ててきたものの価値”を、これから国ごと理解していただきます