あらすじ
十七歳。
本来なら、名家の娘として嫁ぎ先を選ばれるはずだった少女・**白蘭(はくらん)**は、今では後宮の片隅で水桶を運ぶ下女になっていた。
理由は、顔。
――正しく言えば、顔を爛れたように見せる特殊メーク。
薬や香、鉱石の知識に取りつかれた白蘭は、叔父のもとで理にかなった学びを重ねるうち、高貴な家の女として飾られ、値踏みされ、嫁がされる未来に耐えられなくなった。
だから自分で、自分の商品価値を壊した。
そばかすでは足りない。もっと決定的に、誰も欲しがらない顔になればいい。
そうして彼女は、現代の特殊メークにも通じる発想で、火傷のような爛れを作り、名家から追い出された。
叔父の家で薬を扱う下働きをしていたある日、届け物の帰りに近道をしたせいで、人さらいにさらわれる。
目を覚ました時には、王宮の外廷。
白蘭はそのまま、後宮に下女として売られていた。
醜い仮面の下に、ほんとうの顔を隠して。
だが後宮は、美しい花ばかりが咲く場所ではない。
毒、流産騒ぎ、消える香料、笑ったまま嘘をつく妃、そして夜ごと廊下を歩く“仮面の女”の噂。
誰も気づかない違和感を、白蘭だけが嗅ぎ取ってしまう。
これは、醜い仮面をつけた元名家の少女が、
薬と観察眼で後宮の闇を暴き、
やがて自分を捨てた家も、宮中の秘密も、すべてひっくり返していく物語。