あらすじ
辺境の村を飛び出した娘・エルナは、母の訃報を受けて十年ぶりに故郷へ戻る。
貧しくて、寒くて、何もない村。
母はいつも村のことばかりで、自分のことは後回しだった。
だからエルナは、母は自分より村を選んだのだと思っていた。
葬儀を終え、家を畳むために地下の貯蔵庫を開けたとき、
そこに並んでいたのは、十年分のスープ瓶だった。
豆の年。
芋の年。
きのこの年。
どの瓶も、エルナが好きだった味で仕込まれていた。
飢えの年にも、雪の深い冬にも、
母はそれを開けなかった。
「帰ってきた時の分だから」
そう言って、十年分の冬をずっと残していたのだと知る。
これは、村を捨てたと思っていた娘が、
遅すぎる帰郷の中で、
母が自分のために残していたぬくもりを知る物語。