あらすじ
【あらすじ】
慶応四年(1868年)、新天地を目指す蒸気船・神農丸の船底で、幕府軍医総監・松本良順は苦悩していた。
未知の大陸で百万の移民を天然痘から救うため、彼は孤児たちの腕から腕へ、生きたウイルスを植え継ぐ「人痘リレー」という過酷な手段を選んだのだ。
だが、赤道直下の魔の海域で船が停止した時、真の恐怖が這い上がってくる。
熱にうなされる子供たちの譫妄に惹き寄せられ、海から現れたのは、暗緑色の鱗と水掻きを持つ異形の群れ―「深きものども」。
傲慢な軍人はあっけなく暗い海の底へと引きずり込まれ、太古の邪神の眷属たちが、子供たちの命を奪おうと船倉へ殺到する。
近代医学の敗北かと思われたその時。高熱に苦しむ一人の幼い少女・トメが、恐るべきほどに純粋で冷徹な「正解」を口にした。
「あいつら、お水が好きなのよね? だったら、先生の『きれいに掃除するもの』をあげればいいじゃない!」
これは、後に南山の医療と重化学工業を支配する天才少女が、恐るべき実利主義と強烈な消毒薬の匂いで深淵を退けた、血と化学の記録である。
大長編架空戦記『南山共和国建国史』より、狂気と科学が交差するスピンオフ(異伝)!