あらすじ
松野凛花、17歳。
身長178cm。
周りからはよく、「美人」「スタイルいい」「モデルみたい」「かっこいい」と言われる。
名前より先に、背の高い子として覚えられる。
性格より先に、大人っぽくて落ち着いた子だと思われる。
その言葉が、嫌いなわけじゃない。
褒めてくれていることも分かっている。
でも凛花は、そのたびに少しだけ笑って、少しだけ自分の身体を折りたたむ。
本当は、友達みたいに小さく手を振りたい。
可愛いものを見つけたら、声を上げてはしゃぎたい。
くだらないことで笑って、失敗して、子どもみたいに騒いでみたい。
けれど178cmの自分が少し動くだけで、動きまで大きく見えてしまう気がしていた。
服だって、思うようには選べない。
袖が足りない。
パンツの丈が足りない。
ワンピースは想像より短くなる。
可愛い服を着たいだけなのに、鏡の中ではどこか浮いて見える。
細すぎると、棒みたいに見える。
少し太ると、身体の面積が大きいぶん、すぐ分かる気がする。
背が高くていいね。
そう言われるたび、凛花はうまく笑う。
背が高いことには、きっと良いこともある。
でも、背が高いことだけで自分を覚えられるのは、少しだけ苦しかった。
大人っぽく見られる。
でも、まだ大人じゃない。
かっこいいと言われる。
でも、可愛いものに憧れる。
そんな凛花が憧れているのは、親友の真柴芽衣だった。
小柄で、明るくて、何をしても「かわいい」と言われる芽衣。
凛花にとって芽衣は、自分がなれなかった女の子そのものだった。
けれど芽衣にも、芽衣のコンプレックスがある。
小さいから子ども扱いされること。
真剣に怒っても、怖くないと笑われること。
守られる側に勝手に置かれてしまうこと。
お互いに、自分にはないものを羨ましがっていた。
文化祭をきっかけに、凛花は少しずつ、自分の身体と向き合い始める。
小さいものに憧れることと、自分を小さく見積もることは違う。
これは、身長という分かりやすい個性の奥にいる、
17歳の女の子が、友達との時間の中で、自分のサイズで笑えるようになるまでの物語。