あらすじ
サイレンの音__
パトカー、消防車、救急車が迫ってくる。
目の前に広がるのは、炎に包まれた街。三つのサイレンは、その災厄に向かって響く。
1980年4月4日、人々は同じ種類の恐怖を再び経験した。27年経った今でも、多くの人々の記憶に刻まれている事件__【全焼事件】
事実だけが淡々と記録された、飾らない4文字の名前。
犠牲者は175名、負傷者は27名、合わせて202名が被害を受け、1152名は奇跡的に無傷で生還した。
街は《《全焼》》し、焼け野原となった。犯人は海外へ逃亡。
事件は27年後の今も人々の脳裏に焼き付いているが、すでに時効を迎えている。
一部では問題視する声もあるが、犯人が見つからない以上、訴訟を起こすことはできない状況にあった。
そんなある日、一人の男が神社を訪れた。
男は賽銭箱に五円玉を投げ入れ、静かに目を閉じる。
__また“御縁”のある賽銭か。
賽銭に文句をつけるのは神としてどうかと思いつつも、狐神は思わず呆れてしまう。
__少し、心を読んでみようか。
それは神ならば誰もが持つ力、“心読”。人の心の内をある程度まで覗ける強い能力だ。
普段見えるのは、「金が欲しい」とか、「幸せになりたい」といった、ありふれた願いばかり。
だが、今回だけは違った。
『罪を償いたい。
全焼事件の犯人として、もうケジメをつけたい』
その男の心にあったのは、欲ではなく、悔恨だった。
__これは、狐神と犯罪者が紡ぐ、儚い物語である。