あらすじ
百年に一度、天界と冥界の距離が近づく。
その夜、若き天使セラは、人間界の境界でひとりの悪魔と出会う。
悪魔の名は、レイ。
本来なら裁くべき存在。
名を聞くことさえ禁じられた相手。
けれどセラは、迷い込んだ人間の子どもを冥界へ引かず、人間界へ帰したレイを見てしまう。
悪魔にも、心があるのではないか。
そう思った瞬間、セラは天使としての罪を犯した。
一方、レイもまた、セラを堕とすことができなかった。
奪うべき天使の名を呼び、守ろうとしてしまった。
掟に背いたふたりは、罰として人間界へ堕とされる。
ただし、翼も角も力も奪われ、
別々の人間の赤ん坊として生まれ落ちる。
残されたのは、天使と悪魔だった頃の記憶だけ。
百年後。
十二歳になったセラは、人間界で「レイ」という名の少年と出会う。
レイもまた、「セラ」という名の少女と出会う。
けれど人間となったふたりには、相手が本当にかつての天使と悪魔なのか分からない。
神通力も、魔力も、魂を見分ける力も失っていたから。
同じ名前。
似た言葉。
なぜか惹かれてしまう心。
十二歳から二十五歳までの時間の中で、ふたりは少しずつ近づいていく。
悪魔の浄罪は、愛すること。
天使の浄罪は、悪魔が心を持つこと。
けれど、ふたりはそのことを知らない。
そして再び、天界と冥界の距離が近づく時。
天使は、悪魔だった男の名を呼ぶ。
罪としてではなく。
罰としてでもなく。
ただ、愛した人の名として。