あらすじ
受験戦争の三年間を“戦時体制”のように生き抜いた紀夫は、
第一志望に合格した瞬間、勝利よりも深い虚無に包まれていた。
卒業式の日は、結果待ちの不安で何も覚えていない。
その数日後、ふと足が向いたのは、
もう誰もいないはずの教室だった。
静かな教室でひとり座った紀夫の前に、
“もしも”のような光景が広がっていく。
かつて名前すら覚えていなかった女子たちが、
優しい声で話しかけ、
涙を受け止め、
輪の中へ迎え入れてくれる。
現実では得られなかったはずの温かさ。
けれど、その一日は確かに紀夫の心を救い、
未来へ踏み出す小さな力を残していく。
虚無のあとに訪れた、小さな春。
光のなかで見つけた“ありえたかもしれない青春”の物語。