あらすじ

青森に戻って三年、恵は桜を避けて生きてきた。東京での花見の席、満開の桜の下で夫に別れを告げられた記憶が、春になるたび胸の奥に重く蘇るからだった。五月の連休、窓の外に咲く桜にも目を向けずにいた恵のもとに、同僚の明子から花見の誘いが届く。毎年断ってきた誘いだったが、今年はなぜか「行く」と返していた。  川縁の桜並木は東京とは違い、人も少なく、川の音が静かに流れていた。輪の中にいながらどこか馴染めずにいた恵は、やがて一人その場を離れ、桜の下に腰を下ろす。三年ぶりに見上げた桜は、過去の記憶とは関係なく、ただ美しく咲いていた。その事実に戸惑いながら、東京での時間や見てこなかったものを思い、恵は涙を流す。理由の定まらない涙だったが、隣に来た明子は何も問わず、ただ共に桜を見上げた。「どっちが好き」と問われ、「こっち」と答えた瞬間、恵の中で何かが静かに変わる。  翌朝、窓を開けて桜を眺めながら、恵は初めてこの場所で迎える春を受け入れ、来年もまたここで桜を見る自分を思い描くのだった。

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エブリスタ
エブリスタ2026/05/06
  • 現在の作品五月の桜の下で