あらすじ
【大逆事件まで、四年。俺はその日から、ここで生きることにした】
異世界転生小説を三桁読んだ高校生・秋幸が転移した先は、1906年の明治日本だった。チートも魔法もない。ただ一つだけあったのは——五年後に何が起きるかを知っているという事実。
そこで出会ったのは、処刑される運命の少女・ハルだった。
問題が一つある。秋幸は歴史を知っていた。
大逆事件・・・1910年、幸徳秋水をはじめとする社会主義者が処刑される。ハルも兄もその弾圧の中で命を落とす。秋幸がどれだけあがいても、歴史は変わらなかった。
それでも俺は、彼女に恋をした。
明治の人々が日露戦争勝利に熱狂にうなされ、帝国に警鐘を鳴らす者たちを死に追いやっていく五年間・・・秋幸は結局何も救えなかった。
しかし最後に、たった一つのことを伝えようとした。
120年後——2026年の四万十で、一人の高校生がノートに書かれた見覚えのない一文に気づく。
「器は空っぽだから、誰かのものになれる」
届かなかったはずの言葉が、時代を越えて残っていた。