あらすじ

昼休み、同僚に冷やかされた。 「日曜、家に誰もおらんのやろ。ほな言うたらええやん——うち、誰もおらんねん、って」 笑って流したつもりだった。 でも、その夜の電話で、私は自分から口にしていた。 「今度の日曜、うち、誰もおらんねん」 彼は「うん、行くわ」と答えた。それだけだった。 日曜の朝、私はいつもより早く起きて、部屋を片付けた。 椅子の背にかけた白いものを、私はその日、片付けなかった。 片付けてしまったら、今日がただの日曜になってしまう気がした。 午後、彼が来た。 私は彼を、居間ではなく自分の部屋に通した。 ドアを閉める音が、いつもより大きく聞こえた。 棚から二つのカップを出して、コーヒーを淹れた。 彼の視線が、ほんの一瞬だけ椅子の背に止まった。 でも、彼は何も言わなかった。私も、何も言わなかった。 —— 彼が帰ったあと、台所にはコーヒーカップが二つ残っていた。 口紅の跡は、思ったより落ちにくかった。

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エブリスタ
エブリスタ2026/05/06
  • 現在の作品二つのコーヒーカップ