あらすじ
冴えない日々を送る青年カヲルは、コンビニのアルバイトと、後輩のベトナム人・アレンに仕事を教わる毎日を繰り返している。夢も目標も持てないまま、小さなアパートの天井を眺めて過ごす時間だけが、かろうじて自分のものだった。
そんな彼がある日、一本の映画に触発されてパルクール教室の門を叩く。待っていたのは、落ち着いた声と華麗な演技を持つ女性インストラクター・リカ先生との出会いだった。褒められることなど生まれてこの方ほとんどなかったカヲルが、ここで初めて「すごい」と言われる。それも、他でもない自分の能力を。
不器用で臆病で、試練のたびに逃げ出したくなる。それでも、この場所だけは手放したくない。そんな一心で、カヲルはパルクールの修行に向き合っていく。やがてリカ先生から、パルクールの源流に連なる秘密の武術・ネオパルクールの存在を知らされ、その奇抜にして苛烈な訓練に放り込まれることになる。
ネオパルクールは、幕末の動乱期に生まれた武術だという。忍術とパルクールを融合させた初代宗家の技は、百五十年以上の時を経て、現代に密かに受け継がれてきた。そしてカヲルはその訓練の中で、自分の中に眠る異質な才能と、ある不思議な感覚に繰り返し気づかされることになる。どこかで聞いたことのある声。見たことのない景色。懐かしいのに、知らない何か。
笑えて、ちょっとエロくて、気づけば熱い。そしてその底に、静かに張り巡らされた伏線が、やがて思いがけない形で牙を剥く。信じていた人間の正体、隠されていた出自の秘密、そして日本を揺るがす巨大な陰謀——それらが一本の糸で繋がる時、逃げ腰の青年は生まれて初めて、本気で誰かを守ろうとする。
守りたい人がいる。ただそれだけで、人はどこまで行けるのか。幕末と現代が交差する、前代未聞の青春活劇。