あらすじ

「今日も元気か?」 花屋の息子である俺が、小学生の頃から大切に育ててきた一株のアサガオ。 冬を越しても枯れず、年々妖艶さを増していくその花には、ある異変が起きていた。 ――雄しべが、消えたのだ。 自ら受粉することを拒み、ただじっと俺の助けを待つような姿。 母が浮かべる、何かを含んだ柔らかい笑みの意味を、俺はまだ知らなかった。 変貌は、ある熱帯夜に訪れる。 むせ返るような花の香りに包まれた寝室。 動かない四肢を縛り上げるのは、蛇のように蠢く緑の蔦。 月光に照らされた俺の体の上に、それは跨っていた。 体中に花を咲かせ、蔓を尻尾のように揺らす、人ならざる少女。 無口な彼女が、受粉の熱に浮かされた瞬間にだけ漏らす、震えるような囁き。 「……種子《こども》……つくろ……?」 それは、育ての親への純真な愛情が、狂った執着へと変容した合図だった。 一滴の蜜、一粒の種を巡る、人間と植物の背徳的な共生記録が始まる。

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カクヨム
カクヨム2026/05/06
  • 現在の作品小学生の頃育てたアサガオがドライアドになって俺の種を求めてくる