あらすじ
「大家なんだから、これくらい当然よ。この子がここで幸せなら、それでいいの」
都会の片隅に佇むアパート『箱庭荘』。
大家の阿部環(あべ たまき)の仕事は、天井裏の『鳴家』を黙らせ、ガラクタに執着する『付喪神』の部屋を片付け、そして――窓の外に「完璧な青空」を維持し続けること。
ここは、居場所のない者たちが安堵する、美しき隔離空間。
唯一の話し相手である住人と共に、環は不器用で穏やかな日常を守り続けていた。
けれど、ある日。
庭先に迷い込んだ「外の世界」の煤が、環の指先をどす黒く汚した瞬間、完璧だった箱庭に亀裂が入り始める。
守りたかったのは、平穏な日々か。
それとも、自分の手の中にだけある「美しい嘘」なのか。
煤に汚れた右腕を掲げ、少女は微笑む。
たとえ全てを失うことになっても、この楽園は、誰にも渡さない。
――阿部環が選んだ、孤独で極彩色の「永遠」が始まる。