あらすじ
公爵令嬢クレアは、母のペンを使って妹ミリアの代筆を続けてきた。外国語の返書、謝罪状、婚約交渉の文面まで、すべてクレアが書いたものだったが、表向きの評価は美しい妹のものになっていた。
ミリアの同盟国王子との婚約が決まる前夜、父はクレアに命じる。妹の婚約を守るため、一生ミリアの筆跡で手紙を書け。名前を出すな。母のペンも妹の道具として渡せ、と。
名前と人生を奪われると悟ったクレアは、王宮の返事箱から自分の筆跡登録を消し、代筆用の鍵を返して公爵家を出る。すると公爵家は、同盟国から届く手紙も期限も読めなくなり、婚約外交は止まってしまう。
行き場を失ったクレアは、王立郵便院で迷子の手紙を正しい家へ届ける。彼女の筆跡読みは、誰かの名声を飾るものではなく、正式な仕事として扱われる。
一方、彼女を名前なしで使った公爵家はようやく気づく。失った令嬢こそが、自分たちの同盟と婚約を支えていたのだと。