あらすじ
この世界において、魔法は魔物を倒すのには万能だが、「環境を読む」ことには致命的に弱かった。
瓦礫を魔法で強引に退ければ二次崩落が起き、風魔法を使えばバックドラフトが要救助者を焼き殺す。
だから、前代未聞の大規模迷宮崩落が発生した時。
最強であるはずのS級冒険者たちは、瓦礫の下で消えゆく命を前にして為す術がなかった。
ただ一人、火村蓮を除いて。
「動かないで聞いてくれ。今あなたを引き抜くと死ぬ」
剣技も魔法も持たない彼は、前世で培った『特別救助隊員(レスキュー)』としての現代の現場知を持っていた。
クラッシュ症候群、トリアージ、フラッシュオーバー、応力分散。
戦闘では無力な男が、絶望の災害現場においてのみ、誰よりも論理的に、誰よりも確実に命を繋ぎ止めていく。
それはやがて、世界に点在していた知識を統合し、新たな『救助学』を打ち立てるまでの英雄譚。
そして──。
「私はもう、この男が視界から消えたら息ができない」
「私の論理を上書きしたあなたという現象を、私だけが観測したい」
「神より先に、あなたを信じています」
死を覚悟した暗闇で命を掬い上げられたS級剣士。
自身の絶対の論理を打ち砕かれた天才宮廷魔導士。
彼が選ばなかった命の重さを共に背負う教会の聖女。
ヒムラの命に対する誠実すぎる行動は、最強の少女たちの心の一番脆い部分を穿ち、決して逃れられない『重すぎる執着』を各方面から生み出していくのだった。
剣も魔法も届かない絶望の災害現場で、たった一人命を救う男に狂おしいほど依存される、異世界レスキューファンタジー。