あらすじ
伊勢崎要塞守備部隊の木村大樹上等兵は、兵たちの苦境を叫び、總帥閣下の御為を掲げて蹶起する。
だがその背後には、渡邉公威中尉と保安総局の台頭を憎む反渡邉派の策謀があった。
無知を認めぬ扇動者・木村。
兵を見捨てられぬ伍長・畠中仁。
そして、名も記録も持たぬ保安総局の諜報員。
木村の反乱はやがて畠中派へ移り、首相官邸占拠へ発展する。
白川雅彦首相閣下、高官、職員、女中を人質に取った時、彼らの蹶起はもはや忠義ではなく、勅旨に背く反乱となった。
それでも畠中は、兵を救おうとする。
それでも兵たちは、畠中を守ろうとする。
忠誠はいつしか、指揮官を縛る鎖となる。
正しさは、どこで罪へ変わるのか。
記録される事実と、記録されぬ影のあいだで、七=二八事件は終局へ向かう。
これは、兵を利用して逃げた男と、兵を生かすために戦う男の物語。
そして、反乱を終わらせた名もなき諜報員の記録である。