あらすじ
【あらすじ】
入江志保(いりえ しほ)は中堅旅行手配会社の発券ファクトリーで働く一作業者である。仕事は地味な手配登録と照合作業ばかり。同期の黒澤遥(くろさわ はるか)に手柄を奪われ、ミスだけ押し付けられる毎日。それでも志保は「予約記録の五要素=PRINT」を口の中で唱えながら、誰にも見られないノートに毎日の記録を残し続けていた。
ある嵐の夜、終電後の社内で旧式のバウチャーが束で発掘される。指先が紙片に触れた瞬間、雷が落ちる。
目を覚ますと、王城の地下に積み上がった「予約記録(PNR)」の山の前。世界には〈発券期限(TKTL)〉が存在し、それを過ぎれば世界そのものが「自動取消」される――そう告げたのは老司書だった。世界の予約記録は十年前から滞り、期限まで残り三十日。
「あなたの指は、記録を結べる指です」
故郷に帰る唯一の方法は、世界の予約記録を発券期限内に「発券」すること。手配係としての地味な業務知識だけを武器に、志保は〈P・R・I・N・T〉の五要素を集める旅へと出る。だがその先には、十年早くこの世界へ落ち、宰相位に上り詰めた黒澤遥が、世界そのものを「自動取消」させ自分の名で再発券するために待ち構えていた。