あらすじ
登録者数 四十二人。
それが、七十八歳の祖父・神原源造が八年間続けてきた、ダンジョン配信チャンネルの登録者数だった。
腰を痛めて引退を決意した祖父から「お前、これ、継げ」と古ぼけたノートパソコンを差し出されたのは、俺、神原拓海・大学四年生。
最初は時代遅れの昭和編集に閉口する。
だが視聴者の中に「カメちゃん65」という、五年間欠かさずコメントをくれる古参視聴者がいることを知る。電動車椅子で家から出られない、八十歳の老人。彼のために、爺ちゃんは配信を続けてきたのだった。
俺は決意する。爺ちゃんのレトロな語りを残しつつ、編集だけ令和仕様にして、チャンネルを引き継ぐと。
それが、すべての始まりだった。
爺ちゃんの古い攻略ノートが学術界で再評価され、四十年前に隠蔽された仲間の死が公になり、業界トップから提携の話が持ちかけられ、登録者数が爆発的に伸びていく。
しかし、爺ちゃんに残された時間は、長くはなかった。
これは、七十八歳の祖父と二十二歳の孫が、縁側で茶を啜りながら紡いだ、最後の四十年の話。
そして俺が、爺ちゃんの言葉を中継するだけの配信者から、自分の言葉を持つ配信者に育っていく、静かな成長の物語。