あらすじ
深夜零時、閉店後のファミレス。荻原廉、三十二歳、ホール八年目。副店長に見下され、新人に慕われ、四歳の娘の寝顔の写真だけが俺の支えだった。
その夜、街灯がジと音を立てて切れた瞬間、俺は異世界の砦の中庭に立っていた。崩れかけた戦線、揃わない弓兵のリズム——気づけば俺の口は、いつものあの一言を放っていた。
「ファイア!」
矢の雨が敵の隊列のど真ん中に落ちる。銀の鎧の女騎士アルメリアは俺を「軍師殿」と呼び、白髭の老騎士は片膝をついた。だが俺はただのホールスタッフだ。卓を捌くように戦線を捌くだけ。コース料理のように戦を組み立てるだけ。
そしてこの世界には、もう一人——昨日まで俺を見下していた副店長が、なぜか「軍師ヘネラル」を名乗って魔王軍に居座っていた。
帰る門は、世界を救った者にしか開かない。家族の待つ日本に戻るため、俺は最後の号令を、岩山の頂で告げる。
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