あらすじ
嘘を見抜く目と、薬草の知識だけが武器だった。
辺境の男爵家に生まれたイヴェッタは、王宮の薬務室で働く若き薬師。身分は低いが、調合の腕と鋭い観察力で宮廷に欠かせない存在となっていた。
ある夜、婚約者である子爵家の嫡男ノエルから、突然の婚約破棄を告げられる。理由は「聖女候補のシルヴィに心を奪われた」という、あまりにも身勝手なものだった。
だがイヴェッタは泣かなかった。なぜなら、ノエルの瞳の奥に、嘘の色が見えたからだ──前世の記憶がもたらした、ただひとつの異能。嘘を見抜く力。
婚約破棄の裏には、王宮を揺るがす陰謀が隠されていた。イヴェッタの排除を望む者たちが次々と現れ、甘い言葉で近づく男たちの誰もが、それぞれの思惑を抱えている。
王太子の側近であるアシェルだけが、何の嘘もつかなかった。無愛想で、不器用で、けれど彼の差し出す手だけが、いつも正しい方角を指していた。
九人の男が、イヴェッタに執着する。ある者は恋に、ある者は利権に、ある者は復讐に。そしてその執着が、一人ずつ彼らを壊してゆく。